朝日新聞2月16日(「DV対策、見直す契機に」)

16日の紙面にDV対策についての記事があった。
 宮城三人殺傷事件(宮城県石巻市の民家で三人が殺傷され、18歳の少年が同い年のこの家の次女を連れ去ったとして逮捕。)において、逮捕された少年と次女との関係は典型的なDVであると指摘されている。
 DV被害者に接する上で一番難しい問題として、次のように述べられていた。

恋人や配偶者から肉体的・精神的な暴力を受けながら、合間に与えられる「優しさ」や次の暴力への恐怖から、逆に相手への依存を強めてしまう。「大丈夫だから」と被害を認めなかったり、「やり直せる」
と支援を拒んだりしがちになる。

 今回の事件でも、宮城県警は二度にわたり少年に指導警告を行っている。また、次女にも障害や暴行の被害届を出すよう説得したが、なかなか応じなかったらしい。次女は周囲から諭されて別れを決心しては、復縁する繰り返しだったようだ。
 2001年制定のDV防止法は、裁判所が接近禁止を命令する手続きを定め、違反には刑事罰もある。だが、これも被害者の申し立てが前提だ。また、DV防止法は原則として配偶者からの暴力が対象であり、本件のような未婚のカップルへの対応は十分ではない。

 朝日新聞は、「現行制度に限界があるのか、警察の対応の問題か。今度の事件をよく検証し、教訓をくみ取りたい。」と相変わらず具体策を述べることなく記事を書いている。
そこで、具体策を少し考えてみたい。
 警察には民事不介入という原則があった。これは未だに信じられているが、すでに古い考え方となっている。しかし、すでにみたように、法律上はまだ相手の申請がなければ、警察は介入できない。
アメリカのように、暴力があった事実のみを要件に逮捕出来る法律に改正すべきか。なんにせよ、警察は法と証拠に基づき機能するため、法の改正が必要になる。
 そして、法の改正のためには、社会の世論が高まる必要があるだろう。
世論の高まりを待つことしかできないのか、という点には疑問を抱くが、ストーカー規制法、銃刀類取締法改正などのように、社会での関心が高まることが必要になるだろう。

 そのような意味で、今回の事件が大きく報道され、警察として対応しやすい環境が整えられればと思う。(警察内部で整えたいと思う者がいても、他の案件に時間を割かねばならない状況では、なかなか難しいのではないだろうか。)

ー蛇足ー
同日付の新聞に、「次官・局長・部長は同格」にするという首相方針が載っていた。
当初として提出されていた次官・局長間は同格にし、部長級へは降格処分とするという案は「降格」という極めて高いハードルの故、今回のアイデアにいたったのであろう。
 幹部の人事権を政治の側が握り、各省庁の政務三役を中心に政策を実現しやすくする狙いらしい。
官僚と政治家の関係は、従来自民党がうまく関係を築いていたが、90年代ころから政治を持って行政を指揮監督することが難しくなっていた。これがおそらく、自民党を崩壊させたもっとも深い理由であろうが、これら政官関係については、今月末の輪読における議論を待ちたい。
 なんにせよ、政治家は、政治力を付け、官僚の能力・実績を把握する必要性に迫られているのは確かである。

ー追記(2月18日)ー
 「警察が市民からの相談に対し、迅速に対応しないことから被害が大きくなる失態が後を絶たない」として警察庁は18日、全国の警察本部に対し、捜査部門と相談部門などで二重に管理し、進み具合をチェックするよう通知した。
 通知内容は、?警察に寄せられた相談内容を捜査部門のほかに、相談専門の部門にも引き継ぎ、相談部門は、捜査部門に相談の進み具合を問い合わせるなどチェックしていく、?警察として対応の必要がないと判断した場合なども記録化する、?所長や警察本部の課長を相談業務の責任者と明記する、の三点である。
 冒頭の警察の対応を失態とする評価は、それだけ治安に関する警察への依頼度が高いということであろう。通知内容の?に関してはどこまで記録化されるのであろうか。権力が国民を管理していくことは、必要な点もあるのは当然である。しかし、十分に検討されるべき点があるのも事実である。
今回の通知内容の二点目について、詳細を知りたい。