【説明会】警察庁 省庁内ワークショップ

先日、警察庁庁内にてワークショップが行われた。
従来は、大学の近くの喫茶店で行われるため、緊張しているとはいっても、そこまで厳かな雰囲気にはならないのだが、今回は違った。
まず、出席者確認のため、警察庁前に建物に即して、一列に並ばされる。(まるで、罰を受けるときのような感じだった・・・。)
その後、合同官舎内移動時にも、一列に並ぶようにや、二列に並ぶようになどの指示が飛び、
待機時間があったりなど、セキュリティの都合上、仰々しい感じだった。
(石黒さんが「なんかいつもと雰囲気が違うけど、僕たちはいつもと一緒だから」とおっしゃって下さったのが、実は結構うれしかった!!なぜ、人事の方はあんなに素晴らしい方たちなのだろう・・・。)
さて、セキュリティーの凄さに圧倒されつつ、18階の警察庁の会議室につくと、机が円陣に囲まれており、机上には人数分のお茶が!!
しかも、この会議室、すっごく夜景がきれい!!
公務員が夜遅くまで働きやすいよう、心づかいなのかもしれない(笑)

さて、前置きはこれぐらいにして、今回のワークショップ。
テーマは、「安全・安心なまちづくり」であり、事前に公表されていた。
まず、説明者である補佐が出席者に、どんなことを聞きたいのかと順次当てていく。
ちなみに、今回の説明者は、生活安全局の生活環境課課長補佐 小堀隆一郎様であった。

外務省にも出向経験がある方で、説明の中にも、当時の経験を基にした説明がなされていた。
今回、説明が非常に面白いと思ったのは、経験をもとにした説明が非常に丁寧になされていたことである。
最初に、外務省での出向時のお話をなさったので、何かあとで警察庁の業務内容と関連させるつもりであろうと思い、聞いていたが、この違いが、かなり重大で、「警察庁のミッション」を理解する大きな手がかりとなるものであった。
 つまり、海外での安全(犯罪)は、自分たちでコントロールできるものではないのである。(あくまで、いかにして狙われないか、がポイントである。)
しかし、国内では違う。「個々人が被害に合わないように」するだけではなく、「犯罪自体をなくそう」とすることが可能なのである。

 その指摘後、H10年がピークであった犯罪件数が減少した背景についてのお話があった。
社会全体の取り組みの中での、警察独自の活動として、「検挙」「被害者支援」「予防」を三本柱にしたお話であった。
 まず、「対加害者」についてのお話。犯罪防止のための重要な手段として、検挙をあげ、消費者詐欺や新しいタイプの犯罪についてどのような手段が有益かを述べられた。
また、broken windowの論理を紹介してくださった。内容は、小さな秩序の乱れが、大きな事件を引き起こすという内容である。自転車の放置であったり、二人乗りであるといった(語弊を恐れず言うと、)比較的小さな事件でも、しっかりと指導・勧告することにより、「国民の規範意識の低下」に間接的に貢献できるのではないかということであった。(「国民の規範意識の低下」について、のちに質問したところ、特に特別な意味が込められているわけでもなく、ただ一般論を述べたまでということであった。)
ここでの話のポイントは、「いかにして犯罪件数の低下を狙うか」ということであった。
 次に、「対被害者」についてのお話。DVが例に出され、DV防止法の説明があった。しかし、少々わかりにくく、暴行はあるが、被害者が検挙まで望んでいないケースでは結局どのようになるのかが分からなかった。(アメリカの一部の州では、暴行が確認されれば、被害者が望もうが望まないが関係なく、検挙される。)日本の場合、どうなるのであろうか・・・。被害者が望まないケースでは、検挙されない場合もあるのであろうか。DVについては、いろいろな仕組みがあると述べるに留まっていたと思う。(時間があれば、この点についても質問したかった。)

 犯罪件数の減少の背景のお話のあとは、警察庁のミッションについて、事前の参加者の質問を基に、お話された。
警察庁は、都道府県警を指揮・監督すると共に、「大事に至らない一歩前の」規制を法律や条例などでする。日本の警察には依然、治安に対する、期待が高いのである。
たとえば、街頭犯罪の抑止対策として、犯罪に弱い特定のサービスの強化を、官民が一体となって行うという話があった。また、環境自体を整えるという手段も有効であるとの指摘もあった。つまり、犯罪が起こりやすい公園と起こりにくい公園を比較し、道路・公園などで犯罪が起こりにくいものをモデル基準とするなどである。官民とタッグを組む場合、警察庁は「情報提供」が最も有益な手段となる。

 最後に、「地域の主体性の定着」についてのお話。
警察(庁)は主体性を促すために、ボランティア活動の支援やWEBページでの情報提供、表彰などを行っている。どこまでが自治体がやるべきで、どっからが国家的統一が必要なこと(警察庁が担うべきこと)なのかの、線引きは私には難しく感じた。
 
 お話のあとは、質疑応答の時間。
僕は、「国民の規範意識の低下」と「民の個々人の主体性」について質問した。
一点目は、「国民の規範意識の低下」と「価値観の多様性による「正しいもの」の基準のブレの歴史的推移」や「テクノロジーの発展により、少しの狂気で大きな犯罪が起こせること」との関係性についてである。先に述べたが、“一般的に”国民の規範意識は低下しているらしい。だが、はたしてそうであろうか。確かに、異常な犯罪が、何の宗教上の理由もなく、自己を守るためでもなく、起こっていることは事実である。しかし、それらは、規範性と何らかの因果関係があるのであろうか。テクノロジーが進めば、その分、便利なものは重大な武器となりうる(車など格好の例である)。むしろ、マスメディアの発達により、被害の実態が広く簡単にわかるようになったため、統一的な規範はできやすくなることはあっても、低下する原因が分からない。(法が確立されると、それをくぐろうとするやつが出現するのと同様に、統一的な規範ができれば、それをかいくぐろうとする輩もでることは考えられても、それが広く国民一般の心理となるとは思えないのである。)以前にも述べたが、現代の社会においての「富」とは、「安全・安心の体感」であると思う。いくら経済的に安心できなかっても、その前に、肉体的に安心できなければ、常に疑心暗鬼になり、「信頼する」という心は失われ、結果、経済活動にも大きな支障をきたすばかりでなく、精神的にも裕福な暮らしはおくれるはずはない。つまり、警察庁の目指す「安心・安全」という概念は、国家の最も大切で、基本的な前提条件を守ろうとするものである。「国民の規範意識」と「富」とは一体どのような相互性があるのであろうか。
二点目は、一点目の質問の根底とかぶる点はあるのだが、警察庁は具体的にどのようにすれば、個々人が主体的に目的意識を持ってもらえると考えているのか、問うた。ここでの、目的意識とは、「自分のことを大切にする」という当たり前のことである。最近、自分の身を自分で守れるはずの状況で、守ろうとしない人が増えている。説明で、「警察庁は土壌を整える」とおっしゃっていたのだが、それが具体的にはどのようなことかを問うたのだ。答えは、まず「警察は、個々人にそのような意識を持ってもらおうなどという大それたことは考えていない。」とのこと。なるほど、さすがは実務家だと思った。官僚の仕事は、あくまで実務なのである。(到底実施に及ばない)論理上のことをぐだぐだ検討していても、意義は少ないのである。しかし、そのような答えを述べた上で、「自ら、安全を獲得しようとする人は少ない。犯罪の深刻さを知ってもらうことが大切である。」と述べられた。またしても、なるほど。
勉強もそうであるが、目的意識を持てばはかどるものである。その点で、「犯罪の実態を正しく知ること」こそが、個々人の目的意識を増大させ、危機管理能力に長けた個々人ができるのであろう。そのためには、警察の「情報提供」がまさしく、有益だと改めて感じた。

さて、今回の説明会のまとめの最後に、説明中に小堀補佐がおっしゃった、警察庁の魅力について非常に共感した言葉を述べておく。

警察庁の仕事というのは、経済的な、また可視的な結果が出るわけではない。加えて、ある対策を練ったとして、それがどれだけの予防効果を生み出したのかは分からない。
また、終りのない、かつ絶え間ない努力が必要である。治安の安全・安心のために一生懸命がんばることのできる価値観を持った人に来ていただきたい。

学生のうちに、空理空論ではなく、かつ近視眼的でもない考え方を身につけ、ぜひ社会に貢献したいと改めて思った。