【輪読】吉田裕『日本人の戦争観』(岩波書店、2005年)

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本日、SFCにて輪読を行った。
使用図書はタイトルに記してあるが『日本人の戦争観』である。
日本人の戦争観の変容について時代順に、当時の書物等を参考に考察したものである。
発表担当は僕だったのだが、レジュメ作成前に論点を書き出した紙が実に六枚に。
レジュメを二枚に収めようとしたのだが、結局四枚に(笑)

さて、この本の第一印象としては、筆者がすごく丁寧に原書にあたり、当時のアンケート結果などを出来るだけ使用していると思った点である。
読み進めていても、当時の様子が非常に分かりやすかった。
だが、一方、それがあだになっている点がある。
つまり、アンケート結果や当時流行った本などの紹介があるのだが、それらがなぜ流行ったのかという論理があまり丁寧ではなく、データと通説等をもとに意見を述べたという印象がある。
(アジアに対する日本人の意識の欠如を指摘している点や『失敗の本質』など経営書として後世が扱っている点等に対する指摘など、筆者の持論であろうと思われるところは非常に熱く語られている。)

今回、この本を通し、テーマとしたのは三点。
?対日批判に対する感情的反発が偏狭で攻撃的なナショナリズムに転化する可能性について。
?「戦争観」の意味について。また、その使われ方及び、作られ方について。
?「戦争」という行為について。

その他、主要な論点として、

?「東条人気」と「東京裁判に対する反発」との関連性
?天皇退任論にある、「天皇と国民の一体感」ということについて、現代との関連性
?「ダマサレタ」という国民の中に存在するある種の被害者意識と講和条約後に噴出した占領下において抑圧されていたナショナリズムとの関連性

がある。

今まで戦争観についての本が読んだことがなかったため、非常に勉強になった。
未読リストの中に、青木保『「日本文化論」の変容』(中央公論社)がある。
今回の本を読み、その本を読めば、「日本人」の形成過程及び「日本」というアイデンティティまたナショナリズムについて考えやすくなるであろう。

次回は、12月17日。
頑張って読み進めよう!