【書評・まとめ】青木保『異文化理解』(岩波新書、2001年)

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「文化」を本当に理解するとはどのようなことであるかについて問いていた本である。
そして、異文化を知るということにより、文化という大きな構造から脱することが可能である。

日本は、他文化を広く受け入れる一方、それを日本の文化の中に取り込む。
つまり、非常に開かれた受容性と同化を備えている一方、消化による閉鎖性という側面もあるのである。
また、自分たちにないものを他者に見出そうとする、異文化への憧れが、日本の近代化を促進させたファクターであることも指摘しつつ、今後の現代社会において文化についての研究が重要になってくることを指摘。

文化を「自然」「社会的」「抽象」レベルの三つにわけ、説明している。

混成するのが現代文化の条件であり、それが個々の文化の特徴であると述べ、
文化の時代として、土着的な時間、普遍的な文化の時間、近代化や工業化を促す時間、現代的な時間の四つの時間で構成されていると説明。

ディアスポラの概念、ノスタルジーと「自文化の発見」との説明があった。

その他、グローバリゼーションを一つの切り口とした、現代の情勢を説明していた。

今後、文化政策が国際政治上にとどまらず国内の発展においても重要な政策である、また、「境界の時間」という概念が今の現代日本社会において構築されなければならないと、再認識できた本であった。
しかし、この本の出版時(2001年、7月)は同時多発テロが起こる前であり、ソフトパワーについての言及があまりなされてなかった。
タイでのフィールドワークや中国の例が出されていたことは、さすがは文化人類学者であると思うところである。