『剣岳 点の記』

最近、レイトショーでよく映画に行く。

それでも恋するバルセロナなどほんわかしたものも良いが、やはり胸にぐっとくるものは、見たあとの余韻が長く残る。
剣岳を見てから、何作かの映画を見たが、今でも剣岳の余韻が残る。

最近、感動させようと、泣かせシーンをよく盛る作品がある中、この映画にはそのようなシーンは全くなく、感動できる。
これこそ、登山の醍醐味であろう。

以前、山岳会のOBから言われた言葉をしみじみと思い出す。
OBは「知性豊かな山登り」という話の中で、

 『「知性豊かな」ということは登山のようなスポーツにとっては
非常に大きな意味を持っているのである。
それは同じ登山によって得られるものを大巾に異なるものにしてしまう。
このことは、たとえば二三のヒマラヤの記録を読むだけで理解しうるであろう。
「知性豊かな」人々によって書かれたものは、そこに胸をつかれる人間性がある。
かれらは登山という積極的な行為の中から人間のもつ真実を
くみとる能力をもっているのである。
こうした人々のみでひとつの会をつくることが出来れば‥』

と述べられたのである。

現役諸君には、本映画と共に、原作も併せて読んで欲しい。
また、『八甲田山 死の彷徨』『氷壁』も併せて手に取ってほしい。

これらの作品がスクリーン上でも感動できるのが、役者が演出を必要しないからであろう。
原作の追体験をすれば良く、演出などしなくても、「登山」はしっかりと味わえるのである。

今回の作品、監督が「本物」を求めていたというのは非常に納得できるものであった。