【書評】藤原正彦『国家の品格』(新潮社、2005年)

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ベストセラーとなった「国家の品格」。
ちょうど去年の今頃、読んだものを、このたび後輩と輪読のテキストとして使うことになり、読み返してみた。

事実関係に齟齬があったり、話の展開が力技であったり、やはり数学者であり、政治学者、社会学者ではないな〜と思う。
筆者が主張する、国家の品格を取り戻すというのは、結局のところ、文化政策をしっかりしようということであろう。
「論理」「資本主義」に対する批判も、その観点からすると納得が出来る面もある。

だが、これが出版された年が2005年。
ジョセフ・S・ナイによりソフトパワーが広く認識されるようになったのが、2004年以降ということを考えると、筆者も、ナイに感化されたのではなかろうか。
それを、彼が取得している「武士道精神」にのっとって話をしている。

この本の内容はさておき、気になる点が一点。
なぜ、この本が2005年に出版され、ベストセラーになったのか。
2005年11月ということは、小泉内閣時であり、郵政選挙自民党が圧勝したときである。
国民が、政治に関心を持った時期に、この本がベストセラーになった。

当時、この本を読んだ人々はどう思ったのだろうか。